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マエケンマネーの地元還元は画期的な策――地域密着型球団に求められる「社会的責任」【経営学から見たプロ野球】

広島東洋カープの前田健太がロサンゼルス・ドジャースへ移籍するが、松田オーナーは譲渡金の一部を地元やキャンプ地に財政面で還元する意向を示した。

2016/01/27

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市民に支えられたカープ球団史

 そもそもカープ球団がこの判断に至った理由として、2つあると筆者は考える。1つ目の理由はカープ球団自体が儲かっているからだ。
 
 昨年の主催試合の観客動員数が211万266人と球団史上最多の記録を更新。さらに、黒田の凱旋効果もあり、年間指定席約8300席もシーズン前に売り切れ、今期も9割以上が継続し、完売状態である(2014年度の決算は売上が128億7420万円であり、2015年度も記録を大きく塗り替えるだろう)この良好な経営状況から相当な利益が出ていると推測され、地域還元を行う絶好のタイミングであった。
 
 もう1つの理由として、広島市をはじめとした3市にカープ球団は恩返しをしなければならない立場にある。広島市はご存知のように、球団設立当初の株主でもあり、旧広島市民球場を維持管理してきた。マツダスタジアムの建設費90億円のうち、23億円を拠出し、支え続けた。
 
 宮崎県日南市は1963年から春季キャンプを誘致し、天福球場を2005年に改修を行い、温かく選手を迎えている。同じく沖縄県沖縄市も1982年からキャンプを行い、2012年から球場を改修し、カープを盛り上げているのだ。
 
 今後、寄付された行政側もスポーツ振興などを中心に有効活用してもらいたい。
 
 ビッククラブの経営と中小規模の球団経営は違う。無論、強化は必要だが、中小規模の球団がFAや大物外国人選手の補強はリスクがありすぎる。また、チームが「育成球団」というコンセプトを持っている。
 
 地方都市のクラブは地域から愛されることが第一であり、ステークホルダーと良好な関係性を作っていくことが必要だ。
 
 勝つことだけがファンや地域への恩返しではない。
 今回のように、地域密着型の球団が地元へ財政面で還元することはプロスポーツ界に一石を投じる、新しい取り組みだ。そして長期的な経営判断としてはプラスではないだろうか。

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