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MLB移籍を目指す松田、厳しいレギュラー三塁手への道【小宮山悟の眼】

今年のアメリカのFA市場は投手の動きが例年以上に早かった。野手もこれから交渉が活発化する。松田宣浩に、米球団は本当に興味を示しているのだろうか。

2015/12/18

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日本にPR? パドレスの戦略

 しかし、松田にとってまったく追い風が吹いていないわけではない。メディアでは移籍先候補にサンディエゴ・パドレスの名前が挙がっているが、実際にパドレスは松田に対して、他球団よりも有利な条件を提示する可能性がある。
 それは球団として、チームを日本でPRする戦略を推進しているからだ。

 2012年に成田空港からサンディエゴへの直行便が就航され始めたことで、球団は日本をマーケットとして考えるようになった。
 さらに、パドレスには現在、かつてドジャースでアジア部長を務めていたエーシー興梠氏が、環太平洋オペレーションアドバイザーとして在職している。
 興梠氏は、野茂のドジャース移籍に尽力した人物。その興梠氏を中心に、パドレスというブランドを日本に広めようと、チームとして積極的に動いているのだ。
 このオフには、球団独自のトライアウトを高知県で開催。さらにドジャース時代に自ら移籍に携わった斎藤隆をインターンとして招聘。野茂がドジャースに在籍した当時、日本の野球ファンの間でドジャース旋風が巻き起こったが、パドレスには、同じようなムーブメントを再び起こしたいという思惑が見て取れる。

 パドレスというチーム、サンディエゴという街を日本に浸透させたいという動き。松田がその追い風に乗れればメジャー契約を獲得できるかもしれない。
 だがそれでも、先ほども述べたように、サードのスタメンの座を勝ち取ることは難しいだろう。守備固めや代走では使い勝手が悪いので、主にレギュラーの休養日での出場や、左投手に対する代打という起用法になるはずだ。それを松田は素直に受け入れられるのか。

 2002年、松田は亜細亜大1年生時に、来季から日本球界に復帰する和田毅らとともに第31回日米大学野球選手権に出場している。おそらく、そのとき米国のリプケンスタジアムなどでプレーしたことが、メジャー志望になったことへ、何らかの影響を与えているのだろう。
 その想いがどこまで強いのか。極端なことを言えば、「どんな起用法でもいい。マイナー契約でもいいから米国でプレーしたい」と思うのなら、「とことんまでやればいい」と、心から応援したい気持ちがある。

 だが、ソフトバンクと天秤にかける程度なら、厳しい環境が待っていることを予測できるだけに、老婆心から言わせてもらえば、あまりお勧めできない。

 松田がどんな決断を下すか、注目している。

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小宮山悟(こみやま・さとる)

1965年、千葉県生まれ。早稲田大学を経て、89年ドラフト1位でロッテ・オリオンズ(現千葉ロッテマリーンズ)へ入団。精度の高い制球力を武器に1年目から先発ローテーション入りを果たすと、以降、千葉ロッテのエースとして活躍した。00年、横浜ベイスターズ(現横浜DeNAベイスターズ)へ移籍。02年はボビー・バレンタイン監督率いるニューヨーク・メッツでプレーした。04年に古巣・千葉ロッテへ復帰、09年に現役を引退した。現在は、野球解説者、野球評論家、Jリーグの理事も務める。

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