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星秀和(元埼玉西武ライオンズ)――11.9トライアウトへ。燃え尽きるまで野球を続けたい!【中島大輔 One~この1人をクローズアップ】

ある試合の象徴的なワンシーンを切り抜き、その場面の選手の心理や想いを取り上げる連載企画。10月以降はシーズンオフということもあり、試合のワンシーンではなく1人の選手をクローズアップしていく。先週に続き、星秀和を取り上げる。いよいよ今週末に静岡県・草薙球場でトライアウトが行われる。自分を支えてくれたすべての人に感謝の気持ちを抱きつつ、いよいよ本番へ挑む。

2014/11/04

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Daisuke Nakajima



納得するまで野球を続けたい――トライアウトへ臨む理由

 群馬では選手という立場に加え、コーチ補佐を兼任した。だが指導者の立場を務めたことで、プラスになったことはまったくないと言い切る。

「アドバイスしている時間は少なからず、自分の時間を割かれるわけじゃないですか。人に言っている手前、自分が失敗してはいけない。そういう気持ちが出て、消極的になるときもあるんです。僕の仕事はプレイヤーが9割で、コーチが1割。その割合が半々か、コーチの部分が多かったとしたら、ガンガン言えるし、勉強になる部分もあると思う。でも、『いずれ指導者に』という気はさらさらなく、プレイヤーのまま終わりたい。頼まれているからやっているけど、あくまでプレイヤーなので」

 独立リーグに身を置く選手たちは、総じてプロ野球の世界を見据えている。星も例外ではない。グラウンドに駆り立てるのは、昨季から引きずっている悔恨だ。

「はっきり言って、ここまでやってきたのはトライアウトに向けてという形です。去年受けられなかったので。今年は11月、受けますよ」

 視界にとらえるのは、11月9日、静岡県の草薙球場で行われる12球団合同トライアウトのみだ。そこでアピールし、何とかプロ野球選手として再びチャンスをつかみたい――。

 1年前、パチンコと酒に明け暮れていた男を駆り立てるのは、一体何なのだろうか?

「本人が納得するか、どうか、そこだけです。自分で花道を決められる人なんて、ホントにひと握りいるか、いないかなので。それは自分が納得して、しかも周りも納得しているわけじゃないですか。僕らは別に、ここまで来たら、周りが納得とか、関係なくなっちゃうんですよ。自分がどう納得するか。そこだけです。自分が納得して、燃え尽きたなと思ったら、やめるだろうし。やめるときも来ると思うので、いつかは。それがいつかはわからないですけど、そう思うまでは続けます」

 群馬で会った星は、底抜けに明るかった。

 人の優しさに触れながら、ケガと解雇の地獄から這い上がり、ハングリーに夢を追いかける若手選手に刺激され、決して恵まれているとは言えない環境の中で、野球をプレーできる喜びを改めて感じた。そうして覚悟を決めた男には、不思議な爽快感が漂っていた。

 ひとつ、西武ファンに伝えておきたい話がある。

「練習のときは素手で打っていますよ、いまだに。試合はさすがに手袋をしていますけど」

 自身の原点は、いまも大切にしている。11月10日に28歳を迎える星は、まだまだ野球を続けるつもりだ。

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