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体格とは真逆の打撃スタイル。“剛”の山田、“柔”の柳田――日本シリーズの勝敗を左右する「トリプル3」【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】

ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は2人のトリプルスリーの打撃についてだ。

2015/10/24

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山田を1番から3番に移動して浮上したヤクルト

 さて、今年のトリプル3対決は、27歳と23歳の若い打者同志。これからを担う選手同士だ。

 データを徹底比較してみよう。
 二人は、シーズン終盤には3番を打っていたが、山田はシーズン当初は1番を打っていた。役割が違った。

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 打順が違えば、打点や得点の数値に影響が出てくる。このことは考慮しなければならない。
 柳田は李大浩、松田宣浩という長距離打者を後ろに控え、3番でチャンスメーカーとポイントゲッターを兼ね備えた活躍をした。

 ヤクルトは、山田を1番から3番に移し、3番だった川端を2番に固定したことで、打線につながりができ、得点力がアップした。山田はそういう意味でも、エポックメイキングな選手だった。

体格だけ見れば、剛の柳田・柔の山田に見えるが……

 二人の基本スペックと今季成績をずらっと比較してみる。

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 体格を見れば、柳田の「剛」、山田の「柔」という印象があるが、打撃のスペックを比較すると、実は二人の印象は逆転してしまう。

 柳田は182安打を打っているが、単打はそのうち116本、63.7%、山田は183安打を打っているが、単打は104本、56.8%、山田のほうが長打は多いのだ。平均塁打(塁打数÷安打数)は柳田の1.74に対して山田は1.86だ。

 そして柳田の116本の単打の中には、内野安打が20本もあるのに対し、山田はわずか8本。足で稼いだ安打数は、大柄な柳田のほうがはるかに多いのだ。

 山田は二塁打がリーグ最多の39本、二塁打はライナー性の最も良い当たりだとされる。山田の安打は、クリーンヒットが多かったのだ。そしてその延長線上に38本もの本塁打を打った。

 単打数が多く、とりわけ内野安打が多い柳田は、一方で140mを超す特大本塁打も5本打っている。状況に応じてバッティングを変えることができる柔軟な打者だということが言えよう。

 得点圏打率は柳田が.413、山田は.345。どちらも優秀な数字だが、柳田が状況に応じていろいろな攻撃ができる分、得点圏打率が上回っているのだと考えられる。

 二人とも四球は80を超えている。優秀な数字で出塁率でも貢献している。
 しかし敬遠は柳田が4、山田が1と少ない。これはソフトバンク、ヤクルトともに強打者がずらっと揃っているので勝負を避けられることが少なかったことを意味する。四球のほとんどは「選球眼」でものにしたものだ。

 死球は柳田が14、山田が4。柳田は死球のためにシーズンの終盤を欠場してしまった。やわらかい打撃で、どこに投げても打ちわけるタイプの柳田は、内角を攻められることが多いのだ。

 盗塁成功率はともに8割を超して優秀だ。

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