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〝カンフル剤〟となるシーズン途中の監督交代劇~代行監督がチームにもたらすメリット

今季、監督代行を務めた田邊徳雄が来季の正監督に就任した埼玉西武ライオンズ。コーチ陣も新たな顔ぶれが揃い、新鮮な気持ちで現在、秋季練習に取り組んでいる。また、楽天の大久保博元前2軍監督も、田邊監督と同様のケースで来季の正監督へと就任。今季に限らず、こうした流れで監督代行から監督へとスライドする事例が近年、増えてきた。シーズン途中での監督交代や、代行監督が翌年以降も指揮を執ることのメリットについて考える。

2014/10/22

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新監督も決まり、すでに来季へ動き始めた西武

 10月19日、本拠地・所沢で行われた西武の秋季練習。投手陣は岸孝之や菊池雄星、高橋朋己、野手は栗山巧、中村剛也、浅村栄斗ら主力が顔を揃え、トレーニングに汗を流した。14日から始まった同練習としては初の日曜日ということもあり、一部で無料開放された西武ドームの外野自由席には多数のファンが詰めかけ、練習を見守った。

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 厳しいシーズンを終えたばかりのため、全体に軽めのメニューとなったが、21日に右ヒジ遊離軟骨の除去出術を控える秋山翔吾が、河田雄祐守備・走塁コーチと意見交換をしながら、一、二塁間の走塁練習に取り組むなど、来季へ向けて引き締まった表情を見せていた。

 来季、監督代行から昇格する田邊新監督はフェニックスリーグの視察で不在だったが、来季の体制も固まり、栗山や森本稀哲、渡辺直人ら中堅からベテラン勢が率先して声を出し、時折笑顔もこぼれるなどシーズン中に比べると、和やか雰囲気に包まれた。

 練習後、取材に応じた栗山は、「田邊さんのことは二軍時代からよく知っているし、監督も僕のことをよくわかってくれている。監督の力になれるようにやっていく」と、始動したばかりのチームで決意を新たにした。

監督交代で生まれる選手の責任感

 今季途中、西武に激震が走った。
 6月4日、指揮を執る伊原春樹監督が球団に休養を申し入れ、同時に田邊徳雄打撃コーチの監督代行就任が発表された。

 今季、同球団で2度目となる監督就任を果たした伊原監督だったが、チームは開幕3連敗を喫するなど、シーズン序盤から低迷。休養発表時点の成績は20勝33敗、勝率.377でリーグ最下位。同時期に首位に立っていたオリックスからは10ゲーム以上の差をつけられていた。

 2002年に西武を優勝に導き、他球団でも十分な指導実績を挙げていた指揮官は2008年以来のリーグ優勝、日本一を目指して強化を敢行。チーム内の規律も見直し、ヒゲや長髪の禁止など身だしなみにも言及するなど、チームを根本から立て直そうとしていた矢先の出来事だった。

 その伊原前監督の跡を継ぐ形で、監督代行となった田邊徳雄前打撃コーチ。上位チームを巻き返すまでには至らず、最終順位は5位と、5年ぶりとなるBクラスに沈んだものの最下位を脱出。就任後は43勝44敗4分と、ほぼ五分の成績を残した。

 この監督交代劇は決して大きく花開くことはなかったが、西武にとってチーム状態を上向きにさせる〝カンフル剤〟となったのは間違いない。打線の軸であり、主に3番を任された栗山は、その効果を次のように語る。

「伊原さんを辞任させる状況を作ってしまった責任を感じました。監督が田邊さんに変わって、チーム全体が『もっとやらなければならない』という雰囲気に変わったし、気が引き締まった部分は間違いなくあります」

 自己最多タイとなる13勝(4敗)を挙げ、最高勝利率のタイトルを獲得したエースの岸も、「言い方は難しいですけど、ゲームを観ていて、ベンチの雰囲気がいい方向に変わっていきました」と、監督交代によるチームの変化を口にした。

 選手の中に芽生える責任感、ベンチやチーム全体の空気の一新。シーズン途中に前監督が辞任し、新たな人物が監督代行を努めることはチームにとって明らかに悲劇だが、一方で、多様なメリットを生むという側面は間違いなくある。

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