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3割、200安打も現実的? 「進化」する青木宣親【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】

ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、青木宣親についてだ。

2015/06/10

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MLBでもどちらの投手にも順応しはじめた

 2014年初めてアメリカンリーグに移籍した青木は、対戦する投手が変わったこともあり、低打率に苦しんだ。
 ロイヤルズにはダイソンという外野手がいた。リーグ屈指の俊足だが打撃が弱い。シーズン後半の青木は3打席程度打って、ダイソンと交替することが多かった。十分な信頼を得ていたとは言い難い。
 ただ、優勝争いをしていた9月に入って急速に打棒が振るいはじめ、たびたび殊勲打も放った。打率も例年に近い.285になった。ポストシーズンでの活躍も記憶に新しい。

 今季、ジャイアンツが青木を獲得したのは、攻守ともに堅実なところを評価したからだろう。故障もほとんどない。2年1020万ドル(2年目は球団のオプション)という年俸も“お買い得”だった。
 ナショナルリーグに復帰した今季の青木は4月、5月と連続で月間3割をマーク。5月初旬には1番左翼の座をブランコに奪われそうになったが、スランプを短期間で克服し、ポジションを奪還。このところ絶好調だ。
 すでに昨年からMLBでは自身初の3カ月連続月間3割をマークしているが、4カ月目も有望だ。

 単に「調子が良い」のではなく、青木がMLBに順応して進化を遂げてきているという証ではないだろうか。
 いくつかの指標で、それが見て取れる。まずは投手の左右別の打率。NPBからここ10年間のデータだ。

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 イチローも松井秀喜もそうだが、優秀な左打者は左投手を全く苦にしない。NPB時代の青木も左投手に対して.314、右投手に対して.338だった。

 MLBに移籍してからも、青木は左投手を得意としていたが、反対に右投手の打率が急降下した。現在のナショナルリーグでは左投手は約25%。対戦投手は右利きのほうが圧倒的に多い。右投手相手に結果を残さない限り、成績は上がらないのだ。

 今季の青木は、MLBに来て初めて対右投手の打率が3割を超えている。右投手の外寄りの球をうまく左翼方向に弾き返すシーンをよく見る。投球に逆らわない芸術的な打撃だ。
 MLB投手の配球や球筋が頭に入って、より精度の高い打撃ができているのではないか。

 さらに、青木は選球眼がさらに向上している。
 ここ10年の三振率、四球率、三振数を四球数で割ったSO/BBを見ていこう。

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 もともと選球眼が良かった青木はNPB時代、三振は全打席の1割程度。長距離打者の中には3割近くに達する選手がいる中で、素晴らしい成績だった。四球も1割近くある。
 SO/BBは1を切るとトップクラスの選球眼と言えるが、青木は、リーグ屈指の選球眼を誇っていた。

 MLBでも青木の選球眼は健在だ。打率が3割に達しなくても青木が一定の評価を得ていたのは、この選球眼が大きかった。
 今季の青木は、2014年よりも三振率は低下し、四球率は向上している。リーグでも数人しかいない「四球のほうが三振よりも多い」打者になっている。

 こうした指標は、青木が単に調子が良いだけでなく、打撃スタイルが進化したことを意味している。
 もちろんこれからも調子の波はあるだろうが、このような打撃を続けられれば、今季の青木は打率3割、日本人ではイチローしか記録していない200安打達成も夢ではない。

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