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格差是正で“儲かる仕組み”が進化 「量」から「質」へと転換したMLBの球団ビジネス【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】

ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回は、MLBセリグ前コミッショナーが築いた「ビジネスモデル」についてだ。

2015/02/02

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MLBの球団ビジネスは、「量」から「質」へと変換

 さらに、球団のビジネスを見ていこう。
 MLBの球団ビジネスは、「量」から「質」へと変換しつつある。実は、最近「球場の小型化」がトレンドになっている。
 過去20年の球場の収容人員の推移をみると、それがよくわかる。
 
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 20年前、コロラド・ロッキーズが本拠としたマイル・ハイ・スタジアムの収容人員は何と7.6万人。創設したばかりのロッキーズは本拠地ができるまで、NFLのデンバー・ブロンコスの本拠だったこの球場を使っていたのだ。
 パドレスも同様、NFLのサンディエゴ・チャージャースの本拠地で試合をしていた。
 
 そうした「間借球場」をはじめ、20年前のMLBの本拠地は5万人を超える大型スタジアムが多かった。
 しかし10年後には、NFLとの掛け持ち球場がなくなったことで平均収容人員は1割ほど減少。縮小傾向は昨年も依然、続いている。
 
 ヤンキースタジアムはベーブ・ルース以来の旧球場から2011年に新球場に移転した。その際には収容人員は57545人から52325人へ、5000人以上も減っているのだ。
 
 普通に考えれば、収容人員が減れば売り上げも減るはずだ。しかし多くのMLB球団は球場のダウンサイジングを選択している。その代わりに入場料をアップし、効率的に収益を得ようとしているからだ。
 
 庶民的な価格の席は一部残して、後は段階的にシートの価格を細かく設定する。曜日やカードによっても価格を変える。そして1試合1000ドルを超すようなプレミアムシートも設ける。こういう形で全体の収益を上げたのだ。
 だだっ広い球場で、安い入場料で入ってくるお客を相手にするのではなく、コンパクトな球場で、お金持ちのお客を相手にするほうが効率が良い。
 
 グッズなども豊富にそろえて、売り上げを伸ばしている。
 こういう形で、MLBは「儲かる仕組み」がさらに進化しつつあるのだ。
 
 最近は、日本円で30億円を超す年俸を手にする選手が出てきている。NPBなら1球団の年俸総額に匹敵する。こうした巨額の年俸を支払うことができるのは、各球団のビジネスが巨大化し、潤っているからだ。
 MLBとNPBの野球の実力差は縮まっていると言われるが、ビジネス的にはまだまだ大きな格差があるといってよいだろう。

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