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「チャレンジ・システム」導入の成功は、今後のMLBの野球を変えるか?【豊浦彰太郎の MLB on the Web】

昨季からビデオ判定の対象が拡大された。ファンは概ねこの変更を受け入れているようだ。これも時代の流れとして定着すると思われるが、人工芝球場のように、かつてはもてはやされながら結局否定されたものもある。

2015/01/04

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ビデオ判定の最終結論は、今後の世論次第か

 古いファンである筆者は、「誤審もゲームの一部」と考える伝統主義者だ。昨年のナリーグ地区シリーズ、ナショナルズ対ジャイアンツ第2戦でのことだ。この試合は、延長18回の熱戦となり3対2でジャイアンツが制したのだが、筆者がこの試合を観戦していて気になったのが9回表最後のプレーの判定だった。
 
 1対2でビハインドだったジャイアンツがパブロ・サンドバルの適時打でジョー・パニックが生還し同点とし、一塁走者のバスター・ポージーも本塁を狙うもクロスプレーの本塁憤死でスリーアウトとなったのだ。この判定はチャレンジの対象となった(結果は覆らず)。最高にスリリングなプレーの判定の判断材料をビデオに求めることが、ゲームの興奮に水を差す非常に野暮なことのように思えた。
 
 しかし、概ねこの制度はアメリカのファンに受け入れられているようだ。判定結果が出るまで約2分のアイドリングタイムがあるが、昨年夏に現地で観戦した際は、その間観客は再三場内のスクリーンに映される問題プレーの映像を見ながら大いに盛り上がっていた。また、北米4大スポーツの中では野球はビデオ判定の導入では最後であり、そもそも映像を使用することに慣らされていたこともあるのだろう。
 
 日本の国技である相撲は「変わらぬことに価値を見出す」競技だ(異論はあるかもしれない)。それに対し、アメリカのナショナル・パスタイム(国民的娯楽)のベースボールは「変わらないものと変わっていくもののバランスに魅力がある」と思っている。前者は基本的なルールや用具の材質、ヤンキースなどの伝統球団のユニフォームデザインで、後者は選手の多国籍化や球団数の拡張とプレーオフ・フォーマットの変更などだろう。ビデオ判定の導入と拡大も、その後者のひとつと考えるべきかもしれない。ニュースによると、今後ロボットが進化すると消滅の恐れがある職業のひとつがスポーツの審判員だそうだ。
 
 一方で、MLBには一度は本格的採用に踏み出しながらも、結局は捨て去ったものもある。そのひとつが人工芝や密閉式のドーム球場だ。若い読者は意外に思われるかもしれないが、1970年代においては人工芝球場やドーム球場は先進性の証だった。しかし、その後陽光や星空のない屋内のカーペットの上でのゲームがベースボールと言えるのか?という反論が沸き起こった。ビデオ判定への最終評価も、もう少し待ったほうが良いかもしれない。
 
出典:”After review”: Replay changed baseball for the better in ’14 @ MLB.com by Paul Hagen in Dec. 29, 2014

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