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殿堂入り候補者の大渋滞を解消するには、薬物疑惑者の早期排除?それとも投票可能人数の拡大?【豊浦彰太郎のMLB on the Web】

米殿堂入りの投票は空前の有力候補者ラッシュだ。加えて、候補者の中には薬物疑惑者も含まれていることが、投票者を悩ませる。殿堂側は被投票資格期間の短縮により、疑惑者の早期排除を狙っているようだ。

2014/12/30

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誰が使用者で、誰がクリーンなのか不明

 年明けの1月6日、2015年の全米野球記者協会(BBWAA)選出の野球殿堂入り投票結果が発表される。今回の投票の特徴は前年同様の空前の有力候補者ラッシュだ。11月下旬に公表された投票対象者簿には、投手ではランディ・ジョンソン、ペドロ・マルティネス、ジョン・スモルツ、野手ではゲーリー・シェフィールド、カルロス・デルガドが、引退後5年を経て今回から名を連ねた、また、以前からの継続組も、前回わずか2票不足で涙を呑んだクレイグ・ビジオやマイク・ピアッツアはじめ有力者が目白押しだ。そのあおりを受けて、一昔なら殿堂入りの可能性が相当高い成績を残している、エドガー・マルティネス、アラン・トランメル、フレッド・マグリフなどは絶望的な状況にある。

 この現象の背景として、ステロイドなどの薬物使用が蔓延した90年代から00年代前半にかけて現役時代を送ったスターたちが、ぞくぞくと引退後5年を経て被投票資格を得ているからことが挙げられる(ただし、薬物使用と成績向上の因果関係は、いまだに立証されていない)。そして、状況をややこしくしているのは、候補者の中には薬物使用が確実視されている者だけでなく、単に噂があるだけの者も含まれていることだ。もっとストレートに言えば、バリー・ボンズやロジャー・クレメンスだけの問題なら、彼らへの投票だけを排除し続ければ良い。しかし、他の候補者に関しても誰が使用者で誰がクリーンなのかは恐らく永久にわからないということだ。

 BBWAA経由での殿堂入りに際しては、投票権を持つ記者は1名あたり最大10人に投票できる。そして、候補者は、一定年数の間(前回までは15年)に投票者の75%以上から得票を得ると殿堂入りとなり、5%未満になれば次回以降の被投票権を失う。そして、今回の投票から重要な新ルールが適用される。それは、被投票資格の保有期間を前回までの15年から10年へ短縮するというものだ。この背景について、『FOXスポーツ』のケン・ローゼンタル記者は、自身のコラムで以下のように述べている。

To me, this seemed a rather obvious attempt to clear the ballot of players who are linked to performance-enhancing drugs.
この変更の狙いが、薬物疑惑の候補者をなるべく早く被投票対象から外すことであることは、明白だ。

 この殿堂側のルール変更の通達に対し、投票する側のBBWAAは1人の投票者が投票できる人数の上限を10から12へ拡大することを求めている。それについては、ローゼンタルも同意見の様だ。

15 might have been an even better number, but 12 at least would ease the pressure on each voter, pressure that only increased with the Hall’s unilateral action.
本音を言うと15人ならさらに良いが、12人でも(少なくとも残した成績の面では有力候補者がひしめく中で)年数の短縮という殿堂からの一方的な変更による投票者へのプレッシャーは、軽減されるだろう。

 しかし、BBWAAも自らの改革案を主張するには苦しい要因があることは、彼も認めている。

The solution is for voters to stop being so stingy. Only 50 percent of the voters used all 10 slots in last year’s election.
(被投票期間の短縮という)その改革案は、投票者のけちくさい行為を抑止するものだ。昨季、貴重な10票を全て使いきった記者は半分しかいない。

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