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MLBの「アンタッチャブル」な記録を楽しむのも、野球の醍醐味の一つだ。【広尾晃の「ネタになる記録ばなし」】

ブログ「野球の記録で話したい」を運営中で『プロ野球解説者を解説する』(イーストプレス刊)の著者でもある広尾晃氏。当WEBサイトでは、MLBとNPBの記録をテーマに、週2回、野球ファンがいつもと違う視点で野球を楽しめるコラムを提供していく。今回はアンタッチャブルなMLBの記録についてだ。

2014/12/29

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日本人にも〝隠れた大投手〟がいる

 次に投手各部門のリーダー、歴代、現役、そして日本人選手についてだ。防御率、奪三振率(9回当たりの奪三振数)、SO/BB(三振÷四球、制球力の指数)、WHIP(1回当たりの安打、四球の走者数)は1000イニング以上。WARは、守備、投球の総合指標だ。

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 先発、完投、勝利、敗戦などは19世紀から20世紀初頭に活躍したサイ・ヤング。投手最高のアワードに名を遺す大投手。MLBにもかつてあった「先発完投」時代の象徴。ウォルター・ジョンソンも20世紀初頭の投手、パット・ガルビンは19世紀の投手だ。
 こうした記録は、分業、ローテーションが整備された今では「アンタッチャブル」。

 一転してセーブは、最近の投手が並ぶ。1位は昨年までヤンキースの守護神だったマリアノ・リベラ。2位のトレバー・ホフマンも最近の選手だ。

 三振記録に注目。打撃部門でも説明したように、現代のMLBは「三振時代」だ。奪三振率はどんどん上がっている。
 そんな中で70~80年代に活躍したノーラン・ライアンの記録がまだ残っているのは偉観だ。ライアンはまだ奪三振数がそれほど多くない時代にあって、ひとり三振の山を築いていたのだ。2位、3位には21世紀まで投げていたランディ・ジョンソンと、ロジャー・クレメンスが迫っている。

 奪三振率はランディ・ジョンソンが1位、現役のマックス・シャーザーも4位につけている。そして実はダルビッシュはランディ・ジョンソンを上回る11.22というすごい奪三振率なのだ。まだ545.1回しか投げていないが、あと3年間このレベルを維持すれば「歴代奪三振率1位」が見えてくる。

 制球力の良さを示すSO/BBは、19世紀のトミー・ボンドが1位で、2位のカート・シリング、3位のペドロ・マルチネスは最近の投手。奪三振数の増加とともにSO/BBの値も上昇している。
 上原浩治は救援投手だから350.1回しか投げていない。このランキングには入ってこないが、SO/BBは8.956。驚異的な数字になっている。何しろ6年間で四球を46個しか出していないのだ。「隠れた大投手」だと言えよう。

 現役投手のランキングは、ロイ・ハラデー、マリアノ・リベラらが引退したために様々な顔ぶれが出ている。クレイトン・カーショウはこれから上位にどんどん顔を出すことだろう。
 日本人投手は野茂英雄が大部分の記録を持っているが、防御率、SO/BB、WHIPは黒田博樹。「質」の高い投球をしていたことがわかる。MLBファンからすれば、力がありながらNPBに復帰するのは残念でもある。

 年末年始にこうしたMLBの「大記録」に触れて、「野球の奥深さ」を味わうのも面白いのではないだろうか。

 来年もよろしくお願いいたします。

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