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リベラ、ネーサンに続く快挙。上原浩治が2年総額20億、40代のリリーフ投手として高額契約を勝ち取れた理由

10月30日、レッドソックスは上原浩治と新たに2年、契約を延長することを発表した。40代の選手への高額契約に、レッドソックスが上原に対していかに高く評価しているかがわかる。

2014/11/03

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スプリットを操り、絶妙なコントロールで空振りを奪う

 何よりもクローザーとしての高い適性を示すのが、ずば抜けた奪空振り率だ。今季の上原の全投球に占める奪空振り率は18.8%。アロルディス・チャップマン(レッズ)の20.0%に次ぐ、大リーグ2位の数字を残した。3位のホアキン・ベノア(パドレス)が17.8%、4位のナ・リーグセーブ王、クレイグ・キンブレル(ブレーブス)は16.6%で、大リーグ全体では10%前後に落ち着く。それだけずば抜けているわけだ。

 チャップマンは102、103マイル(164~166キロ)を投げ込む球界最速投手。対する上原の速球の平均球速は89マイル(143キロ)に過ぎない。では、なぜこれだけの空振りを奪えるのか。代名詞である宝刀スプリット、そしてそれらを操る高い制球力に他ならない。

 8月にスポーツ専門局ESPNの電子版は「MLB最高の投球ツール」という特集を組み、各球種や能力で球界ベスト5を選出した。上原はスプリットで3位、制球力で5位に名を連ねた。

 上原はスプリットで空振りを奪うだけでなく、高めのボールゾーンからストライクゾーンへ落とし、見逃しでカウントを積むこともできる。操るスプリットの種類も4種類以上と言われ、右打者へシンカー気味にシュート回転しながら落ちる球も投げ込む。

 スプリットを警戒する打者に対し、高い制球力でコーナーを突き、速球で空振りを奪うことも。相手打者を惑わせる宝刀のおかげで、89マイルの速球も強力な武器の一つに。

 どんな投手でも球速の衰えは寄る年波には逆らえないが、技術はそうではない。

 まさに年齢による衰えを影響させない投球スタイルで、球団からの高い評価の裏付けにもなった。

 契約を結んだ上原は自身のブログを更新し「この年齢で2年を取れたことは本当に有り難いことです。代理人に感謝です。でもここからが大変だと思います。いい契約をしたんだから結果を出さないとね」と記している。

 スポーツ界において、若さは一つの価値だ。
 未来への可能性が投資価値を生む。40代の選手への高額契約は、業界の常識ではあり得ない。

 40歳以降に迎えるシーズンで上原より総額の多い契約を結んだ救援投手は、マリアノ・リベラ(ヤンキース)と、ジョー・ネーサン(タイガース)の過去2人しかいない。

 不惑のクローザーとして開く新境地。上原にしかできない投球スタイルで、その常識という壁を崩しにかかる。

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