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記録マニアも熱狂!〝最も過小評価されていた大投手〟岩隈久志が進化を証明した2014年

今シーズン15勝をあげ、終盤にはマリナーズのプレーオフ進出争いの中、力投を続けた岩隈久志。許盗塁数、与四球数、1イニングあたりの球数……際だった数字を残し、自身の実力を全米に見せつけた。

2014/10/26

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与四球数が、球数の減少へ結びつく

 快記録に迫ったのは、それだけではない。
 
 岩隈は14勝を挙げた時点で、与四球数が全く同じ14。過去、勝利数が与四球数を上回った投手は、大リーグで3人しかない。最終的には15勝、21四球とこちらも逃したが、精密機械と称される制球力も大いに注目を集めた。
 
 9イニングあたりの与四球率は、1.06。2.00以下で優秀と言われる数字で、ジェイミー・モイヤーが98年に残した1.61の球団記録を大幅に塗り替えた。7月には35回2/3連続無四球を記録し、10年にクリフ・リーが残した38回連続無四球の球団記録に肉薄もした。
 
 これらの数字が導く大きな副産物が、球数の減少だ。岩隈は昨季、大リーグ全体で1イニングあたりの球数が14.1球で、大リーグで最も少なかった。今季もほぼ変わらない14.2球。これは、サイ・ヤング賞頭角といわれるクレイトン・カーショウ(ドジャース)の13.7球、ヘンダーソン・アルバレス(マーリンズ)の14.0球に次ぐ3番目に少ない数字。
 
 2年連続で球数が少なくてすむ省エネ投手と示したことで、岩隈の投手としての価値は大きく跳ね上がる。大リーグでは選手の肩、肘を守りつつ、中4~5日の短い登板間隔で1試合でも多く登板させるため、100~110球前後の球数制限が課される。決められた球数の中で、他のどの投手よりも長いイニングを投げ抜くことができる。メジャーの先発ローテーション投手として、何よりも必要とされる能力なわけだ。
 
 今季の投球回は1カ月以上出遅れたことがあり179回にとどまった。ただ、その1カ月間で6試合投げていたと計算すれば、年間の登板イニング数は、ゆうに200イニングを超えることになる。
 
 与四球数でいえば、1年目から見て43→42→21。許盗塁数は10→5→0と半減させてきている。大リーグの水になじんだこともあるだろうが、日本時代に培った投手としての技術に、一層の磨きをかけていることが分かる。
 
 ジャック・ズレンシックGMはシーズン終了後に、チームが保有する岩隈との来季1年契約延長のオプションについて「我々が悩む必要など何もない」と公使を明言。年俸700万ドル(約7億4200万円)での更新はバーゲン価格以外の何物でもなく、FAとして市場に出れば年俸1500万ドル(約16億円)以上は確実というのがもっぱらだ。
 
 今季終盤にはプレーオフ争いを演じ、最も過小評価されていた大投手の名前は全米にも知られるところとなった。故障などによる万難を排し迎える4年目。記録マニアを熱狂させる快投が、今から待ち遠しい。

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