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高校野球の本質とは何か? 相手の主軸に真っ向勝負で挑み、華々しく散った大阪偕星

13日甲子園球場で行われた二回戦、大阪偕星対九州国際大学付属高校の対戦は打撃戦の末、九州国際大付が10対9でサヨナラ勝ちをした。この試合でも大阪偕星を率いた山本晳(セキ)監督は、普段から選手に伝えている通り、正々堂々と真っ向勝負で挑んだ。

2015/08/14

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野球人山本の礎となった恩師・大河賢二郎

 山本がそう考えるようになったのは、恩師でもある尽誠学園野球部の監督の大河賢二郎の影響があるという。大学卒業後、山本は香川県の尽誠学園でコーチをしていた。

「香川県予選の準々決勝が終わった後だったかな。試合の後、次の準決勝で対戦する学校の選手が大河さんに教えてくれって来ていた。大河さんは熱心に教えるんです。どうして次に対戦する相手の選手を教えるんですかと訊ねたら、〝毎年うちが(甲子園に)行かんでもええないか〟って。対戦相手であっても同じ野球を志している仲間なんですよ」

 大河は中学生時代、手を付けられなかった不良だった伊良部秀輝を育てた名伯楽でもある。
「人間が大らかですよ。自信があるんでしょうね。あの人じゃなかったら、伊良部なんかは野球をやめていたでしょう。普通の指導者じゃ、ああいう子はついてこない」

 九州国際大付での試合、最終回の失点は途中から一塁に入った選手のエラーが絡んでいる。
 試合終了後、責任を感じていたその選手に山本はこう声を掛けたという。
――エラーだと思わなくていいぞ。

 山本は彼を庇う。
「一生懸命やっていた中でのプレーなんで、エラーじゃないんです。たまたま巡り合わせでああいうプレーになってしまった。ガンガン勝負して、それで打たれたんだから、ぼくの指導が悪かったんです」

 甲子園出場を決めた後、山本たちが大阪府庁などに挨拶を回ったとき、「大阪府代表はディフェンディングチャンピオンですから」と好成績を出すように発破をかけられたという。
 前回大会優勝校の大阪桐蔭を破って大阪府代表として甲子園に出場したことを考えれば二回戦での敗戦は屈辱の結果かもしれない。しかし、山本は試合後も優しい顔をしていた。相手の主軸打者に逃げることなく勝負し、華々しく散った。誇り高き、すがすがしい敗者だった。

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