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『1.01の法則』『PDCAサイクル』でレベルアップ――県内有数の進学校・相模原が歩む道

県内有数の進学校でもある相模原。県立勢として64年ぶりの神奈川県代表を目指した夏の挑戦は、横浜高に0対3で敗れて4回戦で幕を閉じた。しかし、激戦区神奈川県において厚い私立の壁を越えるための挑戦は終わらない。

2015/07/24

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藤江直人



選抜落選の悔しさを乗り越えて

 選手たちの“強さ”を物語るエピソードがある。
 昨年11月22日。神奈川県高校野球連盟が第87回選抜高等学校野球大会の21世紀枠の県推薦校を湘南学院に決めてから、一夜明けた練習前にグラウンドで行ったミーティング。佐相監督は選手たちに逆に励まされたと振り返る。
 
 佐相監督自身は「県推薦を得られるのでは」という期待を抱いていた。準決勝で桐光学園に敗れたとはいえ、私学優勢が際立つ神奈川県で、専用グラウンドもないハンデを乗り越えてベスト4に進んだ。
 
 県立川崎北を率い、ベスト4に進んだ2007年の秋には県推薦を獲得している事実も期待感を後押しした。しかし、サクラ散る。相模原が準々決勝で湘南学院を下していたことも、ショックと悔しさに拍車をかけた。
 
「神奈川からは実力で甲子園へ行くしかない。この冬を頑張ろう」
 
 チームを奮い立たせようと檄を飛ばした佐相監督だったが、選手たちの反応は意外なものだった。
 
「しょうがないっすよ、という感じでしたね。僕が一番がっかりしていたけど、あの日を境にモチベーションがさらに上がったのは事実。体を作り直して、バットスイングを含めたすべてのスピードを上げました。この子たちのすごいところは継続力と心の強さ。ダメかもしれない、と絶対に思いませんからね」
 
 陸上部などと共用するグラウンド。三塁側のベンチにはホワイトボードが常設され、65人の部員全員の名前の横に身長と体重、そして2週間でそれぞれが克服すべき短期目標がぎっしりと書き込まれている。
 
「それらを『PDCAサイクル』で繰り返して、選手個々がそれぞれの力をアップさせているんです」
 
 佐相監督の言う『PDCAサイクル』とは、事業活動における生産管理や品質管理を円滑に進める手法のひとつとして知られている。Plan(計画)、Do(実行)、Check(評価)、Action(改善)の4段階を繰り返していく工程を、相模原は野球に当てはめたわけだ。
 
 ホワイトボードには『PDCAサイクル』の他にもさまざまな言葉が書き込まれている。そのなかでも、県内有数の進学校でもあることを感じさせるのが『1.01の法則』と『0.99の法則』だ。
 
 ともに日々積み重ねる努力に関したもので、前者は「前の日よりも1%ずつ努力していけば、1年で『1.01の365乗=37.8』と大きな力になる」と、後者は「逆に少しずつさぼれば、1年で『0.99の365乗=0.03』とやがて力がなくなる」と説いている。
 
 クローズアップされる文武両道に関しても、午後7時半には完全下校となる限られた時間のなかで集中力を研ぎ澄まし、練習で得られた達成感を勉強へのエネルギーに変えるサイクルが生まれている。3年生の大半が練習後に学習塾へ通っていたのが、文武両道を楽しんできた何よりの証となるだろう。
 
 東京大学の文学部を志望するエースの宮崎晃亮は、予選開幕前にこう語っていた。
 
「両立は大変ですけど、野球も勉強もどちらもしっかりとできているからこそ充実しています」

県立相模原・雑感

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