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【ドラフト交差点】超高校級、4者4様の個性あふれる“九州四天王”の進路選択。九州地区は今年も大豊作

2016年度のドラフト会議が20日に迫っている。この1年を振り返ると、様々な選手たちがドラフト戦線に名乗りを上げた。各地区でしのぎを削り運命の日を迎える。そんなドラフト候補たちをリポートする。今回は”超高校級”と評された九州地区の4人だ。

2016/10/13

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社会人挑戦を表明した静かなる“龍”

 190センチ、88キロという堂々たるスペックだけでもポイントは高い。その上、制球力が高く、140キロ台後半の直球が低めに突き刺さるように伸びてくるため、たちまちこの男はプロ球界注目の存在となった。まるで手の届きそうなほど近く感じる圧迫感がある。こうした唯一無二のスケール感の大きさこそが、太田龍の代名詞だ。
 
 北薩の大自然に囲まれた静かな温泉地で育ち、純粋さを失うことなくそのまま高校生になった太田。だからか。その威圧的な体躯とは裏腹に、口調や態度には、他の3人にはない独特の素朴さが漂っている。
 
 宮之城中時代は軟式野球部に所属し、中学3年の時点で135キロを計測したこともある(軟式球)。2度の甲子園出場で注目された鹿児島実の主砲・綿屋樹とは同地区のライバルとしてしのぎを削ってきた仲だ。
 
「彼も途中までは投手をやっていましたから、投げ合ったこともあります。でも、どちらかといえば打者として意識していました。小学校時代は結構打たれていましたが、中学時代はこっちが抑えていたイメージですね」
 
 高校入学後は怪我も経験した。1年秋に腰痛分離症で離脱。動き始めたのが翌年の2月前半だったから、高校最初の冬を完全に棒に振ったことになる。このことは、投球のバランスを崩した3年春先から夏にかけてのプチスランプとまったく無関係ではあるまい。
 
 太田の武器は、最速149キロに達した直球を投げ下ろす長身投手ならではの角度だ。一方で、試合で使える変化球がカーブ、スライダーにほぼ限定されたため、捕まる時には歯止めが利かなくなるというケースも少なくはなかった。
 
 そこで着手したのがツーシームの習得だった。小刻みに芯を外すための球種を覚えたことで、3年夏には少ない球数で打たせて取る投球を身に付けただけでなく、もともとの持ち球だったカーブの生命力も大幅にアップしたのだった。
 
「前田健太さん(ドジャース)のように、カーブで目線を上げておいて真っすぐでビシッとストライクが取れるようになりました。これでも相手打者の目線をいかに崩すかを考えて投球しているつもりなので」
 
 3年夏の準々決勝で涙を呑んだ後、太田は投球にさらなる幅を持たせるべく、社会人野球でさらなるスケールアップを果たす。最後まで闘志を静けさの中に抑え込み、太田は言った。「調子に左右されず結果を残せる投手になりたいです」

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